失われた鉄路をたどる8 線路敷の痕跡をたどる

上田丸子電鉄西丸子線 旧馬場停留所(駅)付近の直線道路(旧線路敷)の写真
上田丸子電鉄西丸子線 旧馬場停留所(駅)付近の直線道路(旧線路敷)

 今回の展示では、常設展示室へ行く廊下に、県内の主な廃線の現状写真と、現役時代の地図を掲示しています。これまで素通りに近かったボードでしたが、立ち止まってじっくりと見ていただいています。マニアの方からは「数が少ない」「定番の場所しかない」との声もありますが、「昔、乗ったことがあるけど・・・(ずっと無関心になっていて)・・・いろいろ思い出す」とか。「この近くに昔・・・があってね」「いや、ちがうだろう。それはもう少し先の・・・」と話がはずみ、おおむね好評です。写真の数が少ない分だけ「この隣の駅は?」とか、「この先は、どうだったかなぁ」と話がふくらみ、記憶がよみがえるようです。「失われた鉄路をたどる」シリーズとしては、写真にない部分を気にかけていただき、見に行く人が増えれば大成功です。
 ところで、現代の駅や複線化された広い線路しか見慣れていない若い世代にとっては、廃線跡は意外なほど狭く感じることでしょう。単線で付属施設も少ないので、明治から昭和初期には、道路を作るよりも効率的だったのかもしれません。写真のような狭い農道程度の幅、直線か緩いカーブが目の付け所です。
 考古学の場合、遺跡を探す時は、新旧の地形図や土地利用図、新旧の航空写真、古地図や絵図、古写真等々を利用しますが、廃線を訪ねる場合も同様とのことなので、親近感があります。違うのは、新旧の時刻表を持ってゆくと良い点でしょうか。古い時刻表は往時を想像することができます。新しい時刻表はどうして?と思っていましたが、旧線の向こう側(新線)を現代の列車が通ったりするのですね。「廃線の写真を撮り終えて帰りかけたら・・・残念!」ということを経験し、はじめて実感しました。初心者には「恐るべし」鉄道の世界です。

夢をのせた信州の鉄道 −失われた鉄路の軌跡− 平成28年度 夏季企画展

歴史館ブログ

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