歴史館のはたらき
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皆さん、ようこそ長野県立歴史館へ。
1994年11月、この更埴の地に、長い間県民の願いであった歴史館が誕生しました。
私たちが歴史の楽しさを学ぶことができる歴史館の建設は、起工式からおよそ1年半の歳月をかけて進められてきました。
歴史館は常設展示などを行うばかりでなく、考古資料課・文献資料課・総合情報課という3つの部門に分かれ、それぞれの仕事にあたっています。
それではまず、常設展示ができてきた様子の一端をご紹介しましょう。
これは、上水内郡三水村に残っていた江戸時代前期の農家です。
この農家を展示するため、調査しながら解体しています。
屋根をふく萱は、小谷村から手に入れました。
萱は江戸時代から建築材料であったため、どの地方でも萱山を大切にしてきました。
解体された江戸時代前期の農家を、歴史館に移して復元しているところです。
屋根ふきは、数少なくなった職人さんによって行われました。
このように、常設展示は時代考証などを踏まえて一つ一つ復元されていきます。
次に3つの部門の主な仕事を見ていきましょう。
考古資料課の仕事は、土器や石器などの埋蔵文化財の調査・保存・整理です。
考古学とはこうした埋蔵文化財から、遠い過去の人間の営みや、歴史の移り変わりを探究する学問です。
遺跡の調査は慎重に行われていきます。
出土した家などの跡や、土器や石器などの遺物は、図面や写真などに丹念に記録されます。
出土した遺物は歴史館に運びます。
歴史館では、さらに壊れやすいものには保存処理を施したり、最新の科学機器を使って、色々な事実を明らかにしたりしていきます。
これは、4000年も昔の縄文時代の人骨です。
遺跡から出土したばかりの人骨はとても脆いので、保存のための処置が必要です。
細心の注意を払って少しずつ強化していきます。
こうして完成すると、皆さんに見ていただけるような状態になるのです。
赤外線カメラを使うと、見えにくい文字を読み取ることができます。
これは平安時代の漆でできた紙です。
文字が書かれているのですが、肉眼ではほとんど読み取れません。
このカメラを通して見ると、くっきりと文字が浮かび上がります。
出土した木器は大変もろくなっています。
このPEG含浸槽は、木器に含まれている水分と保存液を置き換えて、保存処理を行う装置です。
この他にも多くの最新の機器類が備わっており、文字のない時代の多様な情報を知ることが可能になっているのです。
こうして整理された遺物や図面などの考古資料は、収蔵庫に運ばれ、皆さんに公開できるようにきちんと収納されます。
一点一点チェックして棚に並べ、すぐに引き出せるようになっています。
このように、歴史館は遺跡を発掘し、調査研究を行い、埋蔵文化財を長く後世に残す役割を担っているのです。
文献資料課は、県民の文化的歴史遺産である古文書と行政文書の収集・整理・保存をし、子孫に伝えていく仕事をしています。
この古文書は諏訪の古田村の物です。同じ村の資料が、この歴史館と東京の国立資料館にあります。
廃棄するため、ズタズタに切られてしまっています。
国立資料館はすでにその補修作業を進めてきています。
同じ方法で歴史館での補修が完了した時、初めてこの資料の全容が分かるようになります。
整理された古文書は品質の悪化を防ぐために、中性紙の封筒に入れ、さらに桐箱などに収納していきます。
これは、こうした古文書が収納されていく、スギ材で造られている古文書書庫です。
明治以来の長野県の行政文書は、全国有数の保存量と質の高さを誇っています。
文書は紙の質や印刷技術などから、放っておくと酸性化が進んで次第にボロボロになってしまいます。
このため簿冊の傷み具合を点検し、傷んだ簿冊は補修します。
酸性化を抑える中性紙の箱に入れて、文書の保存をしています。
収納された簿冊は、皆さんに公開できるように、行政文書書庫に時代別に収められます。
県の歴史を編纂した信濃資料や長野県史・長野県教育史などの写真資料も収蔵されています。
総合情報課の主な仕事は、歴史資料の調査・研究の成果を活かして、長野県の歴史を理解してもらうことです。
その中心になる常設展示を紹介しましょう。
信濃の自然を象徴している赤沢自然休養林を抜けると、野尻湖にいたナウマンゾウが現れます。
長野県は全国一縄文遺跡が多い地域です。
諏訪郡原村の阿久遺跡に基づいて復元された縄文村では、縄文時代の当時の暮らしを体験することができます。
これは鎌倉時代の善光寺門前です。
絵巻に基づいて、商店である棚店や仏像を作る仏師屋、僧の住んでいる寺庵などが復元されています。
こうした門前の様子から、庶民の日常生活や信仰を知ることができます。
ここは、先ほど見た江戸時代前期の農家です。
衣・食・住をはじめ、当時の庶民の暮らしぶりを、目の当たりに見ることができます。
これは、製糸工場の外壁と内部の復元です。
外壁は現存している岡谷にあった片倉組です。
内部は長野市にあった六工社を、絵図をもとに復元しました。
長野県の近代化を進めた蚕糸業の様子が分かります。
屋外にも展示があります。
縄文の森・万葉の野・中世の林を示す、それぞれの時代の植物が植えられ、その間にその頃の石造物が配置されています。
歴史館が所蔵する考古資料や文献資料・歴史情報を引き出したり、図書を読みたいときは、受付をしてから利用してください。
図書室には、全国の都道府県市のほか、たくさんの歴史図書が揃っています。
ここでは、コンピューターを使った歴史情報サービスが利用できます。
展示資料の詳しい情報も引き出すことができます。
このほか、講演会や体験学習など、歴史を学ぶ様々な場が用意されています。
どうぞ皆さん、歴史館で歴史の持つ面白さを味わい、歴史への旅を始めてみてください。