本目録に収録した標記文書は、2020(令和2)年に東京都武田知久氏より寄贈を受けた家伝資料10件を収録する。 武田氏は長福寺(千曲市屋代)建立に関わる檀那である。 所蔵される古文書は1通で、「武田家朱印状」である。武田二郎宛の文書(写)である。 興味深いのは「武田之庶流信親流系圖」である。「武田信道 一向宗長圓寺道快 母は家女油川氏 信重 全龍と号 武田宮内左衛門 後竹多角兵衛ト改 母は同前」とあることから、武田矢代武田氏は龍宝の第2子を祖とする系統ということである。系図によれば佐久龍雲寺北高全祝に養育され、その後還俗し武田宮内左衛門を名乗ったという。矢代邑柏木氏がこれを迎え婿としたという伝承を有する。また文化年間に作成された「矢代武田氏先祖之像」(龍宝の子宮内左衛門信重)の肖像画も、こうした経緯で作成されたとみられ、武田氏が松代藩士として江戸時代を通じて矢代宿に住したことが知られる。当該期の肖像画としては保存状態・描写技術はよい。賛文は江戸時代後期の儒学者で『四書集註』の校訂者である三谷僴である。江戸時代の家意識を伝える資料としては興味深い資料といえる。
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