本目録に収録した筑摩郡北山村新田文書は、長野県立歴史館が平成6年(1994)に購入した資料である。 この文書群は北山村新田の村役人の家に伝わったものと考えられ、文書のやりとりから、北山村新田は近世の松本藩会田組にあった北山村の新田とみられる。北山村は会田川右岸の複雑な地形の山地に、狭小な平坦部を切り拓いて耕地や集落が営まれた地域で、この新田もそのような場所の一つであろう。 この新田をどのように扱うかについては、北山村と松本藩との間に複雑な経緯があったとみられ、宝暦11年(1761)の史料(5-3-14)から、その概略がうかがわれる。史料から「北山村新田」に名主が置かれたことは読み取れるが、村として独立したのかどうか判然としない。天保年間の史料に「北山村新田」の名主の後任をめぐる文書があるが、「天保郷帳」には独立した村としての記載は見あたらない。文書の年代は慶安5年(1652)から万延元年(1860)におよび、長期間にわたってこの新田が不安定な立場に置かれた可能性も考えられる。 本文書は、主として北山村や松本藩と取り交わした文書から成り、新田の運営や周辺の山林利用等に関するものと考えられる。 当館所蔵の関連文書として、筑摩郡北山村文書(5-19/本書に収録)、隣村の筑摩郡井苅村文書(5-12-4/本書に収録)がある。また、かつて北山村の本村であったとされる「会田町村」に関連して、筑摩郡会田宿本陣横内家文書(5-17)と筑摩郡会田宿問屋横内家文書(5-21)もある。 |