開館30周年記念講演会も満員御礼!!
7月27日(土曜日)午後、夏季企画展に関連した開館30周年記念講演会が開催され、かつてNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(2022年)の時代考証者の一人としても著名な、富山大学講師の長村祥知先生にご講演いただきました。
今回の記念講演会にはなんと、県内だけでなく、関東・中部、遠くは京都・奈良からも聴講を申し込む方もあり、前回の歴史館寄席に続き、今回も当館講堂が満員御礼の状態となりました。
県を超えた、木曽義仲への関心の高さに驚いています。
講演の中では、義仲誕生以前の親世代からの因縁や、それを背景とした源頼朝との“微妙な”関係、入京後の義仲が京の貴族社会の慣例を踏まえて王朝権威を味方にしようとしながらも失敗したこと等が語られました。
とりわけ義仲の失敗について、入京後の義仲が京中で狼藉・徴収などの悪行を行なったと『平家物語』や貴族の日記などでいわれていることが、じつは義仲自身の行為ではなく、義仲入京後に義仲を主と仰ぐようになった、大和国など畿内近国の在地領主(武士)の勝手な行動であったこと。義仲自身は狼藉中止を命じますが、制止しきれなかったことで、在地領主らの悪行が、京中に入ってしまった義仲自身の行動として京の貴族などに認知されてしまった結果であることを、義仲が狼藉中止を命じた決定的証拠である国宝の東大寺文書から実証的に解説してくださいました。
来る者を拒まず、自身を慕って助けや所領の安堵を求める者には義理堅く助けの手を差し伸べる。そんな義仲の人柄がうかがわれますが、従者が増えれば増えるほど失点が重なり、京の貴族や後白河院からの反発をまねいて、結果それが義仲にとって仇となってしまった、ということを教えていただきました。
無位無官から公卿昇進目前まで出世しながらも、入京した結果失敗してしまった義仲と、その失敗に学んでか、配流以前にあった官途のアドバンテージも利用しつつ在鎌倉のまま官位を高め、京へ派遣した弟の義経や舅の北条時政に対して乱暴狼藉を徹底的に自重させた源頼朝の対比も浮き彫りになり、“愚かだが愛すべき人”として義仲を形容してしまうには、あまりにも切ない、両者の違いなどを解説していただきました。
講演会後のギャラリートークも大盛況。講演会で登場した国宝・重文の古文書を、当館職員の先導・解説で間近にご覧いただきました。
公開期間はあと1カ月を切り、8月25日(日)まで。皆様のお越しをお待ちしております。(文献史料課 鈴木)