考古覚書2~小学生も挑戦!考古学講座で圧痕レプリカ法を体験しました~

 1月30日(土)に「特設考古学講座」を開催し、11名にご参加いただきました。コロナ禍で今年度予定していた講座が数回中止になり、なにか少人数で、考古学を身近に感じる体験をしていただきたいと思い「特設」回を設置しました。

 今回は『土器に残された“食”の痕跡~土器圧痕レプリカをとってみよう~』と題し、館蔵の土器で「圧痕(あっこん)レプリカ法」を体験していただきました。

土器の表面に残る穴

 土器の表面や内面を観察していると、1cmに満たない小さな穴を発見することがあります。この穴は、土器製作時に粘土に混ざった植物・種子・虫などが、土器の焼成過程で焼け落ちたため残ったもので「圧痕(あっこん)」と呼びます。

 「圧痕レプリカ法」では、この穴のなかにシリコンを流して型をとり、元の形を復元します(レプリカ)。シリコンを走査型(そうさがた)電子顕微鏡で観察し、原生の植物と比較することで、圧痕の正体を同定します。

 1990年代から積み重ねられてきた研究成果により、ダイズ・アズキといった栽培種、アワ・キビといった畠作の雑穀類、そしてイネの圧痕が、縄文~弥生の土器で確認されており、各地域における栽培や農耕開始の時期・様相が判明してきています。

 講座では、まず粘土板を用いて練習を行ったあと、館蔵の土器をよく観察していただき、圧痕を探してレプリカをとりました。今回取り扱ったのは、長野市松原(まつばら)遺跡・榎田(えのきだ)遺跡・春山(はるやま)B遺跡から出土した弥生時代中期の栗林(くりばやし)2式土器(約2,050年前)です。2017年、馬場伸一郎さん・遠藤英子さんにより、イネと雑穀(アワ・キビ)といった種類の圧痕が確認され、栗林式文化圏におけるイネと栽培穀物の複合的栽培の存在が報告された貴重な資料です。

 参加者はとても集中して土器の観察、レプリカ採取に取り組んでいました。多くの方が、アワと思われる円形の圧痕やイネ籾の圧痕をきれいにとることができました。なかには、「コクゾウムシ」の圧痕が報告されている土器に取り組んでくれた方もいらっしゃいました。

 レプリカ採取後は、走査型電子顕微鏡でレプリカを観察し、同定はどのように行っていくのか実感していただきました。

 さらに、X線で土器のレントゲンを撮影すると、表面には見えない「潜在(せんざい)圧痕」が見つかることがあります。今回、表面に多くのイネ籾圧痕が残る甕(かめ)1点を撮影したところ、潜在圧痕らしき空間はあるものの、縄文時代中期に見られるようなエゴマやマメ類が大量に混ざった土器とは異なることが分かりました。

 このことから、粘土に意図的にイネ籾を混ぜたというよりは、粘土にイネ籾が混ざってしまうような環境で土器を製作したのではないかと推測できました。

 参加いただいた方からは「教科書でしか知らなかった土器に触れられて、新しい研究方法を体験できて良かった」「日常で体験できないことができて良かった」といった講評をいただきました。

 また、今回は普段から講座にご参加いただいているリピーターのお客様に加え、小学校低学年~中学生の新たなお客様にもご参加いただきました。「もっと探してみたい」「今度は石器のことを知りたい・つくりたい」「人骨の歯から年齢などを調べたい」といった嬉しいご意見、本当にありがとうございました(^^)

 来年度も、いままでの講演形式の講座に加え、少人数の体験型講座を計画したいと思います。幅広い世代の皆様の、ご参加をお待ちしております。

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