古文書公開日記19-紙でできた死装束-

新年度になりました。といっても、業務が変わることなく、古文書整理は淡々と進みます。淡々としたなかにも、珍しいものや重要な史料が見つかると面白くなります。誰かにこんな史料があったと伝える場が、このブログ「古文書公開日記」です。引き続きよろしくお願いします。
埴科郡森村の名主中澤家文書を整理中です。かつてこのブログでも江戸時代の似顔絵を紹介したことがあります。さて、今回は、江戸時代の紙で作られた「死装束」がでてきました。背中には弘法大師を配し、その周囲に梵字で記された真言(マントラ)がびっしりと印刷されています。いわゆる「経帷子(きょうかたびら)」というものです。死者を西方浄土へと送り届けるために着したものです。本来なら死者とともに土葬されたはずですので、何らかの理由で使用されなかったのでしょうか。現代の告別の場でも、印刷された経帷子を死者とともに棺に納める風習は残っていると思います。楮の紙でできた江戸時代の経帷子は初めてお目にかかりました。
私たちが出くわすのはたんなる手紙だけではありません。今回のように文字を通して死後の安穏を込めた一枚の浄衣も庶民の信仰のありようを知る貴重な資料となるのです。