古文書公開日記18-松本藩松川組大庄屋の異国船海防日記-

翻刻文書の写真2

 当館古文書愛好会では、館蔵の未翻刻文書をテキストをもとに学習会をおこなっています。今年度は松本藩松川組大庄屋清水勘左衛門(惟次)が、1854年に浦賀沖に再来航したペリー艦隊に対する海防警備に関する控え(1冊)を解読しています。
 丁数(ページ数)150丁という分量を、38名で全7日(9時から16時まで!)の学習会で読み込みました。まず班毎に分担を決め、班の中で輪読し読みを確定させます。さらに全体で発表し、疑問点や誤りを出し合い、最終的に解読文を確定させます。パソコン入力も自前で打ち込み、体裁を整えて印刷します。こうして今年も貴重な1冊が刷り上がりました。
 清水勘左衛門が見聞きしたこと、体験したことだけでなく、かわら版や様々な書状の写しなどを細かく書き留めています。水戸烈公(斉昭)の献策写(海防防禦ニ付上意)や万延元年遣米使節の書状なども収載しています。幕末のこの時期、様々な情報の渦の中にいた勘左衛門。時代の変革を間近に感じるなか、「何でも書き留めておこう」という意気込みを感じさせます。
 驚くのは筆者勘左衛門の絵がとても上手ということです。ペリーの似顔絵、アメリカから献上された数々の品物、黒船の様子。文章をより引き立てるこれらの絵も今回の翻刻文にはカラーで収載しました。
 当館には古文書が23万点公開されています。年間に約1万点づつ公開数は増えています。収蔵した古文書はできるだけ早く公開することが県民の皆さんに対する責務です。しかしいっぽうで、全点を翻刻して公開することは残念ながら不可能です。愛好会のご好意でこのような形で館蔵史料を解読していただくことは本当にありがたいことです。
 冊子は当館にも寄贈いただきました。閲覧室でご覧頂けます。

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