河童だより10 河童だけではない不思議な生物−信濃奇勝録−

雷獣の絵
雷獣(信濃奇勝録より)

 『信濃奇勝録』(全5巻)は、江戸時代末期に、佐久郡の井出道貞が信濃国各地を調査した結果をまとめたものです。残念ながら河童は登場しませんが、不思議な生き物がいくつも紹介されています。
 一巻には、いわゆる「つちのこ」が「野槌(のつち)」として紹介されています。木曽の馬籠と妻籠と間の山中に、8月頃時々出現するされ、形は「蛇の如く中太らか」とあります。大きなものは「長さ一尺二三寸太さ一尺廻り」と書かれおり、「敢て害をなす事なしといへり」とあることから、毒はなくマムシのように危険なヘビとは考えていなかったようです。
 三巻には立科山(蓼科山)に生息する雷獣(らいじゅう)が紹介されています。「この山に雷獣ありて住む故に雷岳という。その姿は子犬のようで、毛はムジナに似て、目のまわりは黒い。鼻つらは細く、下唇が短く、尾も短い。足の裏は皮が薄く、小児の足のようだ。つめは5本あってワシのようであり、冬は穴を掘って土中に入るので、千年モグラとも呼べる。常には軟弱にして人にもなれ、雨が降ろうとするときは勇ましく、接することが難しい」とあります。人になれる子犬のような姿には、恐ろしい幻獣のイメージは見られません。

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