河童だより9 不思議の国 信濃

 佐久郡の瀬下敬忠が1753年に著した『千曲之真砂』には「信濃の国は板東一高き国なり、甲斐よりものぼり、越後よりものぼる、美濃よりものぼるといへり」「この国外より流れ入る水無し、近国の大河、この国を川源とす」と書かれています。信濃には高い山が連なり、そこから流れる水は、やがて大河となって他国を潤すようになります。現代の長野県に対しても、同じようなイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。
 日本中の不思議を集めた江戸時代の番付「大日本国中ふ志ぎくらべ」には、行司として「戸隠山」、頭取として「善光寺」があります。また、番付順に「諏訪郡すわ湖の氷」「妻子ははき木」「戸隠山九頭竜神供」「小県郡浅間山のけむり」「諏訪者釘なしの回廊」「水内郡善光寺の通夜」「善光寺りう燈」「戸隠山拝殿ばかりの社」「諏訪毎日雨のふる処」「諏訪社すわの塔のかげ」「犀川まがりばし」「「木曽かけはし」「ねづみ足のつく人」の13箇所が紹介されています。これは、奥州、武州に続いて3番目の多さです。江戸の人びとにとって山深い信濃は、神秘的なイメージがあり、不思議な魅力を感じさせる場所でもあったようです。
 芥川龍之介の小説「河童」や水木しげるのマンガ「河童の三平」に出てくる河童の世界が長野県を舞台にしていることにもつながっているのかも知れません。

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