河童だより8 捕獲・目撃された河童たち

江戸時代に入ると本草学者たちにより、実在する生き物として河童が紹介されていきました。河童が実在する生き物ならば、捕獲されたり目撃されることもあるはずです。という訳で、さまざまな場所で捕獲・目撃されたとする河童の記録が当時の文献に見られます。長野県内では、伊那郡を中心として奇談が収められている『信濃奇談』に、天正(1573〜1592年)の頃に、羽場村(現在の辰野町)で捕らえられた河童について記述があります。天竜川のほとりに放しておいたウマを河童が川に引きずり込もうとしますが、ウマが暴れ、河童は引きずられて人間に捕まってしまいます。馬屋の柱に縛り付けられた河童を親切な人が逃がしてあげると、その恩に報いるため、川魚などを戸口に置いていくようになったという話です。
「水虎十式品之図」には、各地で捕獲されたり目撃されたりした河童が描かれている刷り物(印刷物)です。カメに似た河童だけでなく、人やサルに似たものなどその姿は様々です。このような河童の情報は、印刷物となることでさらに多くの人びとの間に広まっていくことになります。