古文書公開日誌12 書判と印判の「判物」

 5月の連休も終わり、日常生活に戻りました。古文書整理作業もこれからも順調にすすめていきます。
 さて、当館に収蔵される古文書はどういうルートではいってくるかご存知ですか。
 1つは書店から購入する方法です。各月、県外の古書店から「古書目録」が送付されてきます。そのなかで県内関係の古文書をピックアップします。場合によっては、該当する市町村の担当の方に情報を提供し状況を共有しています。
 第2は寄贈・寄託というルートです。個人の所有者の方から寄付されるものが「寄贈」、緊急避難的に史料をお預かりするのが「寄託」。とくに近年では、土蔵を壊した際に古文書が保管できなくなったというお話もたびたび耳にします。「古いものだから」といって焼却したり、ごみとしてしまうと、ご先祖様の大切な記録が永久に失われます。そんなときなどお困りのことがありましたら、捨ててしまう前に当館までご一報いただければ幸いです。地元の教育委員会様と連携しながら適切な解決方法が見出せればと思います(ただし収蔵スペースの問題もあり当館でのお引き受けを確約するものではありませんが)。
 さて5月には飯田藩士杉本家文書(寄託史料)を整理しました。
 系譜によると、杉山家はもともと烏山藩(栃木県)初代堀親良に仕官したといいます。堀家御普請奉行・代官を勤め、その後堀家が飯田に転封になって飯田藩士となった家です。最後は300石高の知行取でした。
 藩士の家の史料は、様ざまな書簡や知行証文、借用証文、家の芸能書(故実書)など多様な史料で構成されています。しかし本史料群には、系譜および歴代藩主より与えられた知行判物しか残っていません。ある段階で家の重要書のみが分けられそれ以外は散逸したのでしょうか。
 この史料は飯田藩主のうち初代を除く代々の藩主からの判物が含まれています。判物とは、将軍や藩主の花押の据えられた文書で知行の給与がおこなわれるものです。また本史料群には同じ家に対して黒印状による知行安堵も見られます。書判の「判物」と印判の「判物」の差は、前者が重臣ランク、後者はそれ以下の武士対象、という言わば「家格の高低」の差によるとされます。杉本家はその中間にあったランクの家といえるのでしょうか。

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