古文書公開日記4−木下尚江肖像画−
史料整理はかならずしも古文書だけに限りません。
今回は木下尚江の肖像画を紹介します。この作品は昨年度県外流出史料の一部として購入したものです。
尚江は松本藩士木下秀勝の子として1869年に生まれた自由民権運動家で、初期社会主義者として知られています。「病野老」とあることから病を得た晩年の尚江像、しかも手紙に添付されていることから、自画像と見られます。
尚江は「信陽日報」の記者、弁護士などの活動もおこない、松本キリスト教の洗礼を受け、キリスト教人道主義者として日露戦争では非戦論を唱えた人物です。
軸装に貼付された書翰の宛名から、この絵は高崎在住のキリスト教者住谷天来にあてたものと推測されます。住谷は内村鑑三らと交遊した「万朝報」記者で、のち郷里の群馬県に帰って伊勢崎教会、甘楽教会の牧師となっていることが知られます。キリスト教徒、非戦平和主義者として活動していたことから、尚江との交流が生まれたのでしょう。
切手の印字が「12.3.7」となっており、また自画像も3月7日付となっています。木下は1937年に癌を発症しその年の11月に没しています。これが1937年のものと推定すると、この作品は最晩年の尚江肖像となり、意義深いと言えましょう。