古文書公開日記−もうひとつの明治維新−

従軍書翰の写真
従軍書翰

 文献史料課の仕事はあまり皆さんの目に触れることはありません。現在当館は古文書約20万点、行政文書約10万点以上を収蔵しています。わたしたちは少しでも多くの史料を公開し県民の皆さんに閲覧していただけるように日々整理作業をおこなっています。そこでブログでも少しでも新着の公開情報を更新していきたいと思います。
 今回は一昨年新たに所蔵し、つい1ヶ月前の3月に新たに公開対象となった「松本藩士荒川家文書」(5-38)を少しだけ紹介します。
 今年は明治維新150年の年です。旧江戸幕府を倒すための内戦と新政権樹立までの過程を明治維新といいます。長岡周辺で戦闘となった北越戦争に新政府軍として参戦した松本藩士荒川右門太は、従軍記録や戦地絵図をたくさん残しています。例えば写真1は、越後国内の絵図で会津へ抜ける街道周辺の様子を書き記しています。とくに「この間人家なし」「人馬平日通行す」「馬通行できず」などといった図面上の細かな記述は、行軍の際に必要な情報を収集しながら書き込んでいったものと思われます。
 また非常に面白いのは、右門太は家族にあてた書翰のなかに、戦況や行軍路などを事細かに記録し報告していることです。3ヶ月の間に15通も残されています。これらを読み解くことで新しい北越戦争の事実が見えてくるかも知れません。
 明治維新後の右門太は貞正と名を改め、建築関係の仕事についたようです。その晩年の戯作文(戯れに書いた文章)は、思わず笑いがこみ上げてくるものです。
 こうした文書を書き残した150年前の右門太がどういう人物だったか。紙と墨で書かれた古文書を目の前にしてそんなことを想像してみます。文書の整理作業は、右門太のような人たちとの対話でもあるのです。

「古文書目録名検索」ページへ

歴史館ブログ

ページ先頭へ戻る