金属メス vs 黒曜石ナイフ

 近年、シカ・イノシシなどよる農作物被害や、またクマによる人身被害が大きな問題になっています。長野県環境保全研究所では、その対策としてシカ・クマなどの生態調査、保護管理計画にともなうモニタリング調査を行っています。具体的には害獣駆除されたシカ・クマなどを解剖して、毛や脂肪などから何を食べていたか、DNA分析で出自を、歯にみられる縞から成長の具合などを調べるそうです。
 ところが脂肪の多い野生動物は金属のメスがすぐにだめになってしまうようです。そこで金属メスに代わる新たなメスの候補としてあがったのが、旧石器・縄文人が用いた黒曜石製のナイフでした。
 6月2日(木曜日)午後、研究所の方が当館の中庭で解剖を試みました。その結果なんと黒曜石のナイフの方がはるかに使い勝手がよく、ふつう金属メスだと2~3本をだめにするクマの頭部の解体を黒曜石ナイフ1本で、いとも簡単に行うことができました。
 黒曜石の石器は金属器の出現によって衰退します。ただ、すべて金属が勝っていたようではなさそうです。脂肪の付着は黒曜石の方が少ないようで、長く切れ味を保ちました。旧石器・縄文時代の黒曜石製ナイフは動物解体には最強の道具だったようです。
 クマは小谷村で捕獲されたものだそうです。当日、偶然にも白馬村の小学生がこの解体を見学しました。このクマの分析調査を進めてもらい、人間とクマが将来うまく棲み分けできるようになるといいですね。

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