木器処理室より11 阿久遺跡の森でクリとドングリ確保

先月お伝えしたとおり、歴史館周辺ではコナラの実がほとんどなく、クヌギが少々といった感じです。上田市塩田の里山でも同じような状況でした。ところが、原村の国史跡阿久遺跡(あきゅういせき)の森では、例年通り、コナラの実がたくさん生っていました。千曲市・上田市との地域差による気温の違い、あるいは、夏の長雨、蛾の発生数の違いなどに原因があるのでしょうか。森廣信子さんの『ドングリの戦略』によると、実のなる量は、天候などの他に、ドングリを食べる昆虫・動物(人間も含む)との駆け引き、それに周辺の樹木との関係等々、とても複雑なやり取りの中で決まってくるようです。樹木と人の交渉関係に限っても、人間側の一方的な働きかけではなく、奥深いものがありそうです。このあたりは、来年度の秋季企画展「(仮)木器展」に向けて資料を集めたいと考えています。
ともかく、11月29日(土曜日)〜2月1日(日曜日)開催の「縄文土器展」に展示する土器を借りに行った際、阿久遺跡の森では、昼休みだけで大収穫になりました。これで、12月20日(土曜日)に予定している「縄文風クリスマスリース作り」の材料を補充することができ、ホッとしています。
また、阿久では、美味しそうなクリもたくさんの実をつけていました。豊富なクリやドングリを目の当たりにすると、それらを調理し、アク抜きに利用した「深い鍋」(深鉢形土器)の重要性がわかります。生活を支えた深鉢形土器に、感謝と祈りを込めて飾りを貼り付けた気持ちも頷けます。