漆製品の調査と保存処理(木器保存処理室より9)

来年秋に予定されている「(仮)木器展」に向け、新潟県へ出土木製品の調査に行ってきました。主な目的は、長野県内で発見例がほとんどない縄文時代の漆製品の調査です。樹木と人が関わり合う歴史において、縄文時代は、樹木利用が本格化する時代にあたります。それを象徴する事例の一つが漆(ウルシ)です。そして、その後の長い歴史の中で、漆器が「ジャパン」と呼ばれるように、日本を代表するモノになっていきました。
当館でも、東條遺跡などの出土漆製品を所蔵していますが、保存処理が完了したものはごくわずかです。漆器は、木の器本体部分と、表面の漆部分の性質が異なるため、手間暇かけて処理しないと、漆塗面に皺が寄ったり、剥がれ落ちてしまったりする危険性があります。今後、通常の木製品処理に忙殺される合間を縫って、少しずつでも手をつけていきたいと考えています。
ところで、ウルシは縄文時代草創期に大陸から持ち込まれ、前期に本格的な利用がはじまったとされています。しかし、野生化した例はわずかで、現在でも、栽培したものがほとんど。先日、屋代城跡の遊歩道を上っていくと、比較的日当たりのよい所にウルシ科の樹木が密生していました。ウルシ科には、ウルシ以外にも、ヤマウルシ、ヤマハゼ、ヌルデ、ツタウルシなど、かぶれる仲間が多いので、注意しましょう。