ヒノキ材が活躍する保存処理(木器保存処理室より7)
木器保存処理室では、連日30℃近くまで室温が上昇するようになりました。そんな中、千曲市社宮司遺跡、東條遺跡等の木製品を沈めた ポリエチレングリコール槽で、濃度を上げる作業をおこないました。溶液温度が50℃を超える ポリエチレングリコール槽の蓋(ふた)を開け、ゴーグル・マスクなどをつけた状態での作業のため、体感温度はなかなかのものでした。
今回は、3週間ほどかけて、小学校のバックヤード探検や、他業務の合間を見ては、毎日コツコツと作業を重ね、6月初旬に、C槽を20%→40%、B槽を40%→60%に濃度を上げました。考古資料課職員のほか、ボランティアさん2名にもお手伝いいただき、たいへん助かりました。
この作業にあたっては、昨年度導入した電動撹拌機が、大活躍しました。しかし、微妙な溶剤の撹拌には手作業が一番で、ここで活躍したのがヒノキ製のかき回し棒です。写真のように、ヒノキは、左手で ポリエチレングリコール粒を振りかけながら、右手一本でも扱えるほど軽く、そのうえ強度があり、通直で耐朽性にも秀でている優れものです。
ところで、遺跡から出土する木製品を見ると、西日本では古来から、建築材をはじめとして多用途にヒノキが利用されていたようです。しかし、長野県の古墳時代〜平安時代の資料では、ヒノキに近いサワラを大量に利用していたことがわかっています。なぜ、サワラだったのか、今後調べていきたいと思います。
※ ポリエチレングリコールについては、過去の記事(「木器保存処理室より」…第1回・第2回・第4回)にも詳しくありますので、あわせてご覧ください。