御入峯日記
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御入峯供奉日記 51 御輿町ヲ暫行、橋を渡、又町ヲ行 出立でだちの王子有、町離れ左之方浜辺 潮垢離の浜、爰に後白川院御腰懸 石縄ヲ張有、又町ヲ出離れ右之方 少ノ山に蘇生山と札有、次ニ齊田橋と 云立札有、橋はなし、夫ゟ浜辺少し行 牛ケ鼻と云処、爰に牛ノ角ノよふなる 貝有、名処也、次羽六村、又少行 牟婁ムロ郡日高ノ堺袖*摺岩有、次に 槙田村、村中に左之方沖ノ嶋鹿 嶋明神、此処御小休、又少之峠二ツ 越、東岩代村、次ニ西岩代村、左之方 しとゝ野井藪*しとどの藪有、西岩代村光正照寺 御小休、浄土宗小寺也、半道程行 中山村小キ庵室有、庭に能大*蘇鉄 有、次嶋村、切目村離、切目王子ノ社 *袖摺岩:清姫が安珍を追いかける際に袖を摺ったと伝えられている岩。 *しとどの藪:和歌山県みなべ町。神武天皇が国内を統一するため、九州から大和国橿原の宮に入られる途中、この竹藪で弓の矢を作る竹を切られたという。しとどとは、ホオジロのこと。 *大蘇鉄:田辺市にある臨済宗報恩寺の蘇鉄。報恩寺は地域の人々から「紀州の善光寺さん、南海道善光寺、三栖の如来さん」として厚い信仰がある。本尊は、信濃善光寺と同じ弥陀三尊。
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