御入峯日記
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例 言 本書は、令和元年に佐久市岩村田大井道也氏より長野県立歴史館に寄贈された「大井法華堂文書」のうち、江戸時代後期の法華堂第十八代当主源海が、文化三年聖護院門跡盈仁えいにん法親王の大峯山峯入りに引導役として供奉したときの日記(2-33/B-12)を解読したものである。 紙面は、上段に原文の縮小写真を掲げ、中段に原文の翻刻、下段に固有名詞などの注釈を記載した。また、翻刻に当たっては日記であることを重視し、日附を見やすくしたり、日附の上の「一」を省略するなど、一部に変更を加えた。古文書に多く見られる宛字については、出来る限り現在の名称を傍注と注釈で記したが、不明なものについてはそのままとした。注釈は、読みやすくするため文字を大きくしたが、紙面に限りがあることから、主だったもののみにとどめ、簡略化した内容とした。 日記の概要は、第百十九代光格天皇の弟、盈仁聖護院門跡が、文化三年陰暦七月二十五日に京都森御殿(聖護院)を出発し、吉野から大峯奥駈道おおみねおくがけみちを通り熊野三山に参詣した後、中辺路なかへち・紀伊路を経て、同九月二十一日京都白川御殿に入るまでの六十六日間の状況を日記にまとめたものであるが、単なる行動記録でなく、途中の風景描写や感想も織り交ぜた興味深いものになっている。殊に行所(修行場)での修験道独特の沙法(作法)や、各地における聖護院門跡に対する馳走(ふるまい)の記録は、当時の本山派修験を知る上で貴重な史料でもある。 令和四年四月 長野県立歴史館 館蔵文書を読む会 峯村 周治

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